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列王記Ⅱ 9章~11章 |
9章
1預言者エリシャは預言者のともがらの一人を呼んで言った。「腰に帯を引き締め、手にこの油のつぼを持って、ラモテ・ギルアデに行きなさい。
2そこに行ったら、ニムシの子ヨシャパテの子エフーを見つけ、家にはいって、その同僚たちの中から彼を立たせ、奥の間に連れて行き、
3油のつぼを取って、彼の頭の上に油をそそいで言いなさい。『主はこう仰せられる。わたしはあなたに油をそそいでイスラエルの王とする。』それから、戸をあけて、ぐずぐずしていないで逃げなさい。」
4そこで、その若い者、預言者に仕える若い者は、ラモテ・ギルアデに行った。
5彼が来てみると、ちょうど、将校たちが会議中であった。彼は言った。「隊長。あなたに申し上げることがあります。」エフーは言った。「このわれわれのうちのだれにか。」若い者は、「隊長。あなたにです。」と答えた。
6エフーは立って、家にはいった。そこで若い者は油をエフーの頭にそそいで言った。「イスラエルの神、主は、こう仰せられる。『わたしはあなたに油をそそいで、主の民イスラエルの王とする。
7あなたは、主君アハブの家の者を打ち殺さなければならない。こうしてわたしは、私のしもべである預言者たちの血、イゼベルによって流された主のすべてのしもべたちの血の復讐をする。
8それでアハブの家はことごとく滅びうせる。わたしは、アハブに属する子わっぱから奴隷や自由の者に至るまでを、イスラエルで断ち滅ぼし、
9アハブの家をネバテの子ヤロブアムの家のようにし、アヒヤの子バシャの家のようにする。
10犬がイズレエルの地所でイゼベルを食らい、だれも彼女を葬るものがいない。』」こう言って彼は戸をあけて逃げた。
11エフーが彼の主君の家来たちのところに出て来ると、ひとりが彼に尋ねた。「何事もなかったのですか。あの気違いは何のために来たのですか。」すると、エフーは彼らに答えた。「あなたがたは、あの男も、あの男の言ったことも知っているはずだ。」
12彼らは言った。「あなたは偽っている。われわれに教えてくれ。」そこで、彼は答えた。「あの男は私にこんなことを言った。『主はこう仰せられる。わたしはあなたに油をそそいでイスラエルの王とする。』と。」
13すると、彼らは大急ぎで、皆自分の上着を脱ぎ、入口の階段の彼の足もとに敷き、角笛を吹き鳴らして、「エフーは王である。」と言った。
14こうして、ニムシの子ヨシャパテの子エフーは、ヨラムに対して謀反を起こした。─ヨラムは全イスラエルを率いて、ラモテ・ギルアデでアラムの王ハザエルを防いだが、
15ヨラム王は、アラムの王ハザエルと戦ったときにアラム人に負わされた傷をいやすため、イズレエルに帰って来ていた。─エフーは言った。「もし、これがあなたがたの本心であれば、だれもこの町からのがれ出て、イズレエルに知らせに行ってはならない。」
16それから、エフーは車に乗って、イズレエルへ言った。ヨラムがそこで床についており、ユダの王アハズヤもヨラムを見舞いに下っていたからである。
17イズレエルのやぐらの上に、一人の見張りが立っていたが、エフーの軍勢がやって来るのを見て、「軍勢が見える。」と言った。ヨラムは、「騎兵ひとりを選んで彼らを迎えにやり、お元気ですかと、尋ねさせなさい。」と言った。
18そこで、騎兵は彼を迎えに行って言った。「王が、お元気ですかと尋ねておられます。」エフーは言った。「元気かどうか、あなたの知ったことではない。私の後ろについて来い。」一方、見張りは報告して言った。「使者は彼らのところに着きましたが、帰って来ません。」
19そこでヨラムは、もうひとりの騎兵を送った。彼は彼らのところに行って言った。「王が、お元気ですかと尋ねておられます。」すると、エフーは言った。「元気かどうか、あなたの知ったことではない。私に後ろについて来い。」
20見張りはまた、報告して言った。「あれは彼らのところに着きましたが、帰って来ません。しかし、車の御し方は、ニムシの子エフーの御し方に似ています。気が狂ったように御しています。」
21ヨラムは、「馬をつけよ。」と命じた。馬を戦車につけると、イスラエルの王ヨラムとユダの王アハズヤは、おのおの自分の戦車に乗って出て行き、、エフーを迎えに出て行った。彼らはイズレエル人ナボテの所有地で彼に出会った。
22ヨラムはエフーを見ると、「エフー。元気か。」と尋ねた。エフーは答えた。「何が元気か。あなたの母イゼベルの姦淫と呪術とが盛んに行われているかぎり。」
23それでヨラムは手綱を返して逃げ、アハズヤに、「アハズヤ。悪巧みだ。」と叫んだ。
24エフーは弓を力いっぱい引き絞り、ヨラムの両肩の間を射た。矢は彼の心臓を射抜いたので、彼は車の中にくずおれた。
25エフーは侍従のビテカルに命じた。「これを運んで行き、イズレエル人ナボテの所有地であった畑に投げ捨てよ。私とあなたが馬に乗って彼の父アハブの後に並んで従って行ったとき、主が彼にこの宣告を下されたことを思い出すがよい。
26『わたしは、きのう、ナボテの血とその子らの血とを確かに見届けた。─主の御告げだ─わたしは、この地所であなたに報復する。─主の御告げだ─』それで今、彼を運んで行って、主のことばのとおり、あの地所に彼を投げ捨てよ。」
27ユダの王アハズヤはこれを見ると、ベテ・ハガンの道へ逃げた。エフーはその後を追いかけて、「あいつも打ち取れ。」と叫んだので、彼らはイブレアムのそばのグルの坂道で、車の上の彼に傷を負わせた。それでも彼はメギドに逃げたが、そこで死んだ。
28彼の家来たちは彼を車に載せて、エルサレムに運び、ダビデの町の彼の墓に先祖たちといっしょに葬った。
29アハズヤはアハブの子ヨラムの第十一年に、ユダの王となっていた。
30エフーがイズレエルに来たとき、イゼベルはこれを聞いて、目の縁を塗り、髪を結い直し、窓から見おろしていた。
31エフーが門に入って来たので、彼女は、「元気かね。主君殺しのジムリ。」と言った。
32彼は窓を見上げて、「だれか私にくみする者はいないか。だれかいないか。」と言った。二、三人の宦官が彼を見おろしていたので、
33彼が、「その女を突き落とせ。」と言うと、彼らは彼女を突き落とした。それで彼女の血は壁や馬にはねかかった。エフーは彼女を踏みつけた。
34彼は内にはいって飲み食いし、それから言った。「あののろわれた女を見に行って、彼女を葬ってやれ。あれは王の娘だから。」
35彼らが彼女を葬りに行ってみると、彼女の頭蓋骨と両足と両方の手首しか残っていなかったので、
36帰って来て、エフーにこのことを知らせた。すると、エフーは言った。「これは、主がそのしもベティシュベ人エリヤによって語られたことばのとおりだ。『イズレエルの地所で犬どもがイゼベルの肉を食らい、
37イゼベルの死体は、イズレエルの地所で畑の上にまかれた肥やしのようなり、だれも、これがイゼベルだと言えなくなる。』」
10章
アハブにはサマリヤに七十人の子どもがあった。エフーは手紙を書いてサマリヤに送り、サマリヤのつかさたちや長老たち、および、アハブの子の養育係たちにこう伝えた。
2「この手紙が届いたら、あなたがたのところに、あなたがたの主君の子どもたちがおり、戦車も馬も城壁のある町も武器もあなたがたのところにあるのだから、すぐ、
3あなたがたの主君の子どもの中から最もすぐれた正しい人物を選んで、その父の王座に着かせ、あなたがたの主君の家のために戦え。」
4彼らは非常に恐れて言った。「ふたりの王たちでさえ、彼に当たることができなかったのに、どうしてこのわれわれが当たることができよう。」
5そこで、宮内長官、町のつかさ、長老たち、および、養育係たちは、エフーに人を送って言った。「私どもはあなたのしもべです。あなたが私どもにお命じなることは何でもいたしますが、だれも王に立てるつもりはありません。あなたのお気に召すようにしてください。」
6そこで、エフーは再び彼らに手紙を書いてこう言った。「もし、あなたがたが私に味方し、私の命令に従うのなら、あなたがたの主君の子どもたちの首を取り、あすの今ごろ、イズレエルの私のもとに持って来い。」そのころ、王の子どもたち七十人は、彼らを養育していた町のおもだった人たちのもとにいた。
7その手紙が彼らに届くと、彼らは王の子どもたちを捕らえ、その七十人を切り殺し、その首をいくつかのかごに入れ、それをイズレエルのエフーのもとに送り届けた。
8使者が来て、「彼らは王の子どもたちの首を持ってまいりました。」とエフーに報告した。すると、彼は、「それを二つに分けて積み重ね、朝まで門の入口に置いておけ。」と命じた。
9朝になると、エフーは出て行って立ち、すべての民に言った。「あなたがたには罪はない。聞け。私が主君に対して謀反を起こして、彼を殺したのだ。しかしこれらの者を皆殺しにしたのはだれか。
10だから知れ。主がアハブの家について告げられた主のことばは一つも地に落ちないことを。主は、そのしもべエリヤによってお告げになったことをなされたのだ。」
11そして、エフーは、アハブの家に属するものでイズレエルに残っていた者全部、身分の高い者、親しい者、その祭司たちを、みな打ち殺し、ひとりも生き残る者がないまでにした。
12それから、エフーは立ってサマリヤへ行った。彼は途中、羊飼いのベテ・エケデという所にいた。
13その間に、エフーはユダの王アハズヤの身内の者たちに出会った。彼が「あなたがたはだれか。」と聞くと、彼らは、「私たちはアハズヤの身内の者です。王の子どもたちと、王母の子どもたちの安否を気づかって下って来たのです。」と答えた。
14エフーは「彼らを生けどりにせよ。」と言った。それで人々は彼らを生けどりにした。そして、ベテ・エケデの水ためのところで、彼ら四十二人を殺し、ひとりも残さなかった。
15彼がそこを去って行くと、彼を迎えに来たレカブの子ヨナダブに出会った。エフーは彼にあいさつして言った。「私の心があなたの心に結ばれているように、あなたの心もそうですか。」ヨナダブは、「そうです。」と答えた。「それなら、こちらに手をよこしなさい。」ヨナダブが手を差し出すと、エフーは彼を戦車の上に引き上げて、
16「私といっしょに来て、私の主に対する熱心さを見なさい。」と言った。ふたりは、彼の戦車に乗って、
17サマリヤに行った。エフーはアハブに属する者で、サマリヤに残っていた者を皆殺しにし、その一族を根絶やしにした。主がエリヤにお告げになったことばのとおりであった。
18エフーは民全部を集めて、彼らに言った。「アハブは少ししかバアルに仕えなかったが、エフーは大いに仕えるつもりだ。」
19だから今、バアルの預言者や、その信者、および、その祭司たちをみな、私のところに呼び寄せよ。ひとりでも欠けてはならない。わたしは大いなるいけにえをバアルにささげるつもりである。列席しない者は、だれでも生かしてはおかない。」これは、エフーがバアルの信者たちを滅ぼすために、悪巧みを計ったのである。
20エフーが、「バアルのためにきよめの集会を催しなさい。」と命じると、彼らはこれを布告した。
21エフーが全イスラエルに人を遣わしたので、バアルの信者たちはみなやってきた。残っていて、来なかったものはひとりもいなかった。彼らがバアルの宮にはいると、バアルの宮は端から端までいっぱいになった。
22エフーが衣装係に、「バアルの信者全部に祭服を出してやりなさい。」と命じたので、彼らのために祭服を取り出した。
23エフーとレカブの子ヨナダブは、バアルの宮にはいり、バアルの信者たちに言った。「よく捜して見て、ここに、あなたがたといっしょに、主のしもべたちがひとりもいないようにし、ただ、バアルの信者たちだけがいるようにしなさい。」
24こうして、彼らはいけにえと、全焼のいけにえをささげる準備をした。エフーは八十人の者を宮の外に配置して言った。「私があなたがたの手に渡す者をひとりでも逃すものがあれば、そのいのちを、のがれた者の命に代える。」
25全焼のいけにえをささげ終わったとき、エフーは近衛兵と侍従たちに言った。「はいって行って、彼らを打ち取れ。ひとりも外に出すな。」そこで、近衛兵と侍従たちは剣の刃で彼らを打ち、これを外に投げ捨て、バアルの宮の石の柱を運び出して、これを焼き、
27バアルの石の柱をこわし、バアルの宮もこわし、これを公衆便所とした。それは今日まで残っている。
28このようにして、エフーはバアルをイスラエルから根絶やしにした。
29ただし、エフーは、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤロブアムの罪、すなわち、ベテルとダンにあった金の子牛に仕えることをやめようとはしなかった。
30主はエフーに仰せられた。「あなたは私の見る目にかなったことをよくやり遂げ、アハブの家に対して、私が心に定めたことをことごとく行なったので、あなたの子孫は四代目まで、イスラエルの王座に着こう。」
31しかし、エフーは、心を尽くしてイスラエルの神、主の律法に歩もうと心がけず、イスラエルに罪を犯させたヤロブアムの罪から離れなかった。
32そのころ、主がイスラエルを少しずつ削り始めておられた。ハザエルがイスラエルの全領土を打ち破ったのである。
33すなわち、ヨルダン川の東側、ガド人、ルベン人、マナセ人のギルアデ全土、つまり、アルノン川のほとりにあるアロエルからギルアデ、バシャンの地方を打ち破った。
34エフーのその他の業績、彼の行ったすべての事、および彼のすべての功績、それはイスラエルの王たちの年代記の書にしるされているではないか。
35エフーは彼の先祖たちとともに眠り、人々は彼をサマリヤに葬った。彼の子エホアハズが代わって王となった。
36エフーがサマリヤでイスラエルの王であった期間は二十八年であった。
11章
アハズヤの母アタルヤは、自分の子が死んだと、知ると直ちに王の一族をことごとく滅ぼした。
2しかし、ヨラムの王の娘で、アハズヤの姉妹のエホシェバが、殺される王の子たちの中から、アハズヤの子ヨアシュを盗み出し、彼とそのうばとを寝具をしまう小部屋に入れて、彼をアタルヤから隠した。それで、彼は殺されなかった。
3こうして、彼はうばとともに、主の宮に六年間、身を隠していた。その間、アタルヤがこの国の王であった。
4その第七年目に、エホヤダは使いを遣わして、カリ人、近衛兵の百人隊の長たちを主の宮の自分のもとに連れて来させ、彼らと契約を結び。主の宮で彼らに誓いを立たさせ、彼らに王の子を見せた。
5それから、彼は命じて言った。「あなたがたのなすべきことはこうです。あなたがたのうちの三分の一は、安息日に勤務して王宮の護衛の任務につく者となる。
6三分の一はスルの門におり、他の三分の一は近衛兵舎の裏の門にいる。あなた方は交互に王宮の護衛の任務につく。
7あなたがたのうち二組は、みな、安息日に勤務しない者であるが、主の宮で王の護衛の任務につかなければならない。
8おのおの武器を手にし、王の回りを取り囲みなさい。その列を侵す者は殺されなければならない。あなたがたは、王が出るときにも、はいるときにも、いつも王とともにいなさい。」
9百人隊の長たちは、すべて祭司エホヤダが命じたとおりに行なった。おのおの自分の部下、すなわち安息日に勤務する者、安息日に勤務しない者を率いて、祭司エホヤダのところに来た。
10祭司は百人隊の長たちに、主の宮にあったダビデ王の槍と丸い小盾を与えた。
11近衛兵たちは、ひとりひとり武器を手にして、神殿の右側から神殿の左側まで、祭壇と神殿に向かって王の回りに立った。
12こうしてエホヤダは、王の子を連れ出し、彼に王冠をかぶらせ、さとしの書を渡した。彼らは彼を王と宣言した。そして、彼に油をそそぎ、手をたたいて、「王さま。ばんざい。」と叫んだ。
13アタルヤは近衛兵と民の声を聞いて、主の宮の民のところに行った。
14見ると、なんと、王が定めのとおりに、柱のそばに立っていた。王のかたわらに、隊長たちやラッパ手たちがいた。一般の人々がみな喜んでラッパを吹き鳴らしていた。アタルヤは自分の衣服を引き裂き、「謀反だ。謀反だ。」と叫んだ。
15すると、祭司エホヤダは、部隊をゆだねられた百人隊の長たちに命じて言った。「この女を列の間から連れ出せ。この女に従って来る者は剣で殺せ。」祭司が「この女は主の宮で殺されてはならない。」と言ったからである。
16彼らは彼女を取り押さえた。彼女が馬の出入り口を通って、王宮に着くと、彼女はそこで殺された。
17エホヤダは、主と王と民との間で、主の民となるという契約を結び、王と民との間でも契約を結んだ。
18一般の人々はみなバアルの宮に行って、それを取りこわし、その祭壇とその像を徹底的に打ち砕き、バアルの祭司マタンを祭壇の前で殺した。祭司エホヤダは、主の宮の管理を定めた。
19彼は百人隊の長たち、カリ人、近衛兵たちとすべての一般の人々を率いた。彼らは王を主の宮から連れ下り、近衛兵の門を通って、王宮にはいった。彼は王を王座に着けた。
20一般の人々はみな喜び、この町は平穏であった。彼らはアタルヤを王宮で剣にかけて殺したからである。
21ヨアシュは七歳で王となった。 |
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