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キリストの傷跡

「恋しい人(イエス様)は言います。「恋人(私たち)よ、美しいひとよ、さあ、立って出ておいで。
 ごらん、冬は去り、雨の季節は終った。
 花は地に咲きいで、小鳥の歌うときが来た。
 この里にも山鳩の声が聞こえる。
 いちじくの実は熟し、ぶどうの花は香る。
 恋人よ、美しいひとよ。さあ、立って出ておいで。」雅歌2.10~13


私たちの心の中には、さまざまな感情、想い、怒り、憎しみ、全ての欲望があります。
そこから隠れた、もっと奥深いところ、魂のレベルに真の自己が存在します。
この真の自己が人と心を通わし、み霊様との交わりをもちます。
真の自己がイエス様を仰ぎ見、イエス様の衣にしがみつくことができます。

真の自己と出会うところには、扉があってさらに鍵がかかっています。
社会生活の中でなかなかこの扉に気づきにくいし、
気づいても扉の鍵が見つかりません。

しかし、苦しみ悲しみの中で、み言葉に出会うとき、その鍵を手にします。
その鍵は、神様への「信頼」です。
私たちは、社会の中で、教会の中で、すべての生活の中で、神様への信頼を選び取るように招かれています。
いのちに向かう扉、真の自由への扉はこうして開かれます。

私たちの魂は、神様を信頼しています。
しかし、私たちの理性と感性がそのことを十分理解していません。
私たちは、目に見えるものにすぐ心を動かされ、動揺してしまいます。

私たちの中に二人の自分がいて、いつも心が戦場になります。
傷を負った自分は、圧倒的に強く見えます。
もう一人の自分は、手も足もでません。

私たちは、大きく揺り動かされました。
しかし、揺り動かされたところには隙間ができます。
その隙間から光が入ろうとします。

闇に少しでも光が差し込めば状況は変わります。
絶望的な闇は、少しずつ遠ざかり希望の存在に気づきます。
私たちの神様は、やがて来られる方でも過去に居られた方でもありません。
今このとき私たちと共におられる方です。

「わたしの名は、「あなたと共に居る」だ。わたしがあなたの目の涙をことごとくぬぐい取る。
 もはや死はなく、もはや悲しみも嘆きも労苦もない。過去のものは過ぎ去ったからである。」黙示録 21:3~4より書換

私たちは、立ち止まる勇気を持たねばなりません。
そして、自分の中の闇を見つめるのです。 (そのとき、古今東西を問わず 霊的指導者が必要です。)
何もかも忙しく動き回ろうとするのは闇の誘惑です。
それは、大変危険な状態です。

「必要なことはただ一つだけですよ。」(ルカ 10.42より)とあの方の声が聞こえてきます。

立ち止まり生きることを見つめ、痛みの元を見極めれば、
その中で、「光へ向かう道」と「闇へ向かう道」の区別がつくようになります。

こうして私たちは、自分の心がどんなに弱く、傷つき易いかが解ってきます。
私たちは、生きていれば心に傷を受けます。
これは、自然なことです。
私たちには、どうすることもできません。

心の傷は、真(まこと)の愛を手にするための神様からの招きです。
その傷を通して天の父は、私たちに声をかけられます。
「恐れるな」と。

その声を完全に受け入れることのできるのは、
私たちの心の奥に住む信頼できる「無垢な小さな子供」です。

私たちの心の奥に無垢な信頼できる小さな子供がいます。
この無垢な子供は、無条件に神の国を受け入れることができます。
大人には、いろいろな先入観や常識の壁がありますが、無垢な子供にはこれらの壁はありません。
この壁の存在自体を知らないからです。

「子供のように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入ることはできない。」 マルコ10.15
恐れが遠のき、新たな自由が生まれます。

私たちの心の中の無垢な子供は、すでに神の国を受け入れています。
しかし、私たちの理性と感性がそれを十分理解していません。
私たちは、私たち自身を導かねばなりません。
私たちの傷跡を通してイエス様は、招かれます。

私たちは、完全な人間ではないし、そうはなれないことを知っています。
私たちの共同体も完全ではありません。完全は、ありえないことです。
これは、人間の条件です。
私たちは、不完全さを嘆いたり、欠けがあるからといって裁かれたりしてはなりません。
神様は、私たちの足が不自由で、見る力も半分しかないことをよくご存知です。

こうして、私たちの壊れてしまったものを素直に見つめられるようになります。

私たちは、みな心に傷を負っています。
すべての人が弱いのです。
しかし、自分が強いと思っている人は、その傷を心の奥に隠し、
自他共に人目につかないようにしてしまいます。

弱い人は、傷を隠すことができません。
そして、自分が愛されているかどうかに敏感になります。
この弱さを通して神様は、私たちに話しかけられます。
こうした弱さこそが大切なのです。

心の傷は、神様を愛し、隣人を愛するための神様からの呼びかけであり招きです。
そして、天の父は、傷ついたありのままの私たちを愛してくださいます。
私たちは、私たちの心の傷をも愛するように招かれています。

イエス様は、言われます。
「あなたの指をここに当てて、わたしの手を見なさい。
 また、あなたの手を伸ばし、わたしのわき腹に入れなさい。
 信じない者ではなく、信じる者になりなさい。」ヨハネ 20.27

イエス様は、ご自身の傷跡を私たちに示され、
その傷跡を見なさい、傷跡に指を差し入れなさいと言われます。
そこまでされなければ私たちには、イエス様の愛が解らないのです。
私たちは、本当に強情な者、疑り深い者です。

そんな私たちに天の父は、「わたしの子よ」と優しく声をかけて招いてくださいます。

光に心を開けば、少しずつ自分の中に隠れていた神秘に目が開かれます。
私たちは、心の中に自分のいるべき場所が見つかります。
もはや何かを求めてどこでもかまわず走り廻る必要はなくなります。

私たちは、自分の場所で静まり耳を澄ませば
「あなたは、わたしの愛する子」という天の父の声が聞こえてきます。

私たちは、もはや「あなたは、どこに居られるのですか」とはたずねません。
あの方は、私たちの中に居られ、私たちに一番近い方となられました。
この一致が、全ての赦しといのちの元になります。

イエス様は、傷跡を持って復活されました。
その傷跡がキリストを証したのです。
私たちもそれぞれ自分の傷跡を持って復活することでしょう。
この傷跡がイエス様への愛の証となるのです。


追伸

神様のみ手は、どこにあるのでしょうか。
私たちの前でしょうか?。 後ろでしょうか?。 横でしょうか?。
いいえ、神様のみ手は、私たちに一番近いところ、私たちの中にあります。

苦しみ悲しみのとき、主は、一番初めに私たちの心に触れ、
私たちの心を癒してくださいます。
私たちの心をみ手で包んでくださいます。
そして、すべての苦しみの思いを、
主のみ手の中にある喜びへと変えてくださいます。
ですから、
私たちは、苦難のとき喜べるのです。感謝できるのです。
神の国の隠された秘儀です。

神様のみ手は、すでにあなたの心を包み込んでいます。 シャローム
  
 
 
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